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想恋歌

番外編 その2                             2014.9.14

 番外編 《第二十二話》の後の話と後日談。  主要メンバーは最後にちょこっと出るだけです。22話に続けて執筆してあったのですが、お蔵入りにしてたお話です。少し手直しして番外編でどうぞ。 ---------------------------------------------------------------------  佐為に体よく追い払われた南条ほのかは、すこぶる不機嫌極まりないオーラを振り撒いていた。  自分に靡かない男がいるなんて信じられない! 自分程の美貌があれば、大概の男は寄ってくるのに「ああ不愉快だわ!」   私には財力・権力・いい男の三拍子揃った男が似つかわしいのよ。と本人は本気で信じ込んでいる女であった。  知性は要らないのかと訊きたいところだが、其処はスッポリ抜け落ちているようだ。  業界では、頭の中身はカラッポで金と男にしか興味が無い女優として、すこぶる有名である。だが何故かしらソコソコ人気があるのだ。まあ、ソコソコだけれど。  暫く憤慨しながら歩いていたが、ちょっと疲れて来たのを感じた。気がつけばかなり歩いたようだ。ふと前方を見ればカフェが目についたので、其処で一休みすることにした。  コーヒーを飲みながら、今後の方策に没頭する。あんなに理想にピッタリの男を逃してなるものかと思っていた。彼と結婚すれば、一躍時の人になり一生遊んで暮らせる。贅沢し放題! だがあの藤原佐為は一筋縄ではいかない。今までの頭カラッポな男共とは全く違う。自分の頭がカラッポな事は棚に上げる。どうすればいいだろう……。  ふと、一緒に居た青年に意識が向く。  シンドウヒカル……見たことあるのよねぇ。どんな字を当てるのだろ? 彼もいい男だったわね。なんて言うのか、とても愛らしいと言う表現がピッタリくるかな。歳は17・8歳ぐらいだろうか。実際は19歳だが、やはりここでも幼くみられたらしい。  家の鍵を渡されているということは、相当親しい間柄で尚且つ信頼する相手ということになる。 『まさか……あの二人同性愛じゃないでしょうね』  南条ほのか、この手のアンテナは非常に鋭い。  その時背中越しのテーブルから、女性グループの会話が飛び込んできた。 「ねぇ、あの信号待ちで止まってる車の中に居るの、進藤君じゃない?」 「エッ! あ~本当だぁ進藤君だ。凄い車に乗ってるね。隣に居るの誰だろう?」  その声に、ほのかも外に目を向けると、確かに先程の二人がリムジンに乗っている。その、シンドウヒカルは佐為の方を向き、楽しそうに話をしている。  信号が変わり車が発進して行くと「ちょっと貴方達、シンドウヒカルって知ってるの?」  突然、隣のテーブルに座っていた派手な女が声を掛けてきたので、吃驚した女性グループの面々。  お互い顔を見合わせ戸惑っているが、その中の一人は彼女と仕事で関わりがあった。 『ゲッ! 南条ほのか』  思わず口に出そうになった。 『マズッ。私の事は覚えて無いと思うが、この女が覚えるのはいい男ぐらいだからね』 「ああ~驚かせてごめんなさい。私女優の南条ほのかよ」  勿論此処でも知ってるわよね。とオーラを出しているつもり。 「わあ! 南条さんだぁ。スゴ~イ! サインしてくださぁい」   得意満面に「勿論いいわよ。でも、先にシンドウヒカルって誰なのか教えてくれない?」 「進藤君はプロの囲碁棋士です。塔矢君と並ぶ若手の筆頭株で凄く人気があるんです。TVとかコマーシャルにも出たことありますよ」 「そうなんですよ。私達昨日までその進藤君や塔矢君と一緒だったんです。最も大勢の中の一人ですけどね」  プロのイゴキシ? イゴキシってナニ? ほのかの知識の中には囲碁の文字は存在していなかった。 「えっと、それはどういう事?」 「箱根で25日から昨日の昼まで囲碁祭りという催しがあって、私達それに参加してたんです。ねぇ」  連れの女性たちに同意を求める。他の女性達もそうですそうですと頷いている。 「そのイゴ祭りというのは、何をするものなの?」 「2泊3日で、一日目は夜に宴会があって、2日目はプロの先生達に指導碁を打ってもらい、3日目はプロ同士の公開対局を解説聞きながら見るんです。今回の公開対局は、芹澤先生と塔矢君でぇ、解説が白川先生で聞き手が進藤君だったんです。面白かったよねぇみんな」 「うんうん、面白かった。進藤君上手いよね」 「へぇーそうなの」  返事をしたがいいは、全く解らない。 「アッ! 思い出した。進藤君の隣に座ってた人って、藤原コンツェルンの藤原佐為とか言う人だよ。棋院の雑誌で見た。髪の長いもの凄っい綺麗な男性だよ」 「あー知ってる知ってる。バックスポンサーになったっていう、藤原コンツェルンね」  バックスポンサー? って事は、お金出して援助するってことよね。藤原コンツェルンがスポンサーね。その関係の知り合いってことかしら? 「塔矢君も名人戦の挑戦中なのに、大変だよね」 「そうだよねぇー。でもお仕事だから仕方ないよね」  名人戦? ほのか嬢此処で作戦変更に出る。 「私、そっちのテーブルにお邪魔してもいいわよね。何かお好きな物注文して頂戴。此処は私がすべて奢りますから」 「わぁーいいんですか? じゃ、遠慮なくご馳走になります。ありがとうございまーす」  ねえねえ、何にする。私これ食べたいな。じゃ私はこっちにしようかな。私も同じ物にする。私はこれとデザートにしようっと。まぁ~喧しいこと。まぁーったく、人の懐だと思って遠慮ってものが無いわよね。 「私、イゴの世界って全然詳しくないのよ。良かったら教えてくれない?」 「はい、いいですよ。何が知りたいんですか?」 「さっき言ってた名人戦って何なの?」 「タイトル戦の名前です。棋士は対局をして勝ち上がり、段位を上げて賞金を稼ぐんです。タイトルは他に棋聖・本因坊・王座・天元・十段・碁聖が七大タイトルと呼ばれます。その他にも色々な棋戦があって、囲碁棋士の人達は中々忙しいです。その上塔矢君や進藤君は人気者だから、囲碁以外の仕事もあるので、普通のサラリーマンより遥かに稼いでますよ。塔矢君も名人のタイトル取れば、3700万円の賞金に段位が九段になります」 「進藤君だって、天元の挑戦者になったからタイトル取れるかもよ」  3700万円! す・凄い! そんなに貰えるんだ。 「凄いわね。他の棋戦もそうなの?」 「賞金ですか? 棋戦毎に違いますよ」 「若いのにプロって事は、案外簡単になれるのね」  無知が故に出る発言。  女性達は呆気に取られていた。 「南条さんホントに囲碁の事知らないんですね。簡単になどなれませんよ。合格するのは年に数人です。それも余程の才能がなければ合格出来ません。塔矢君はお父さんもトッププロでしたから、小さい頃から才能を開花させて14歳でプロになりましたが、進藤君は囲碁を始めてから、たった2年程でプロになったので、天才って言われてます。そうそうあんた写真持ってたでしょ。南条さんに見せてあげたら」  あんた、いい男ウオッチング好きだもんね。と突っ込みが入る。   ホラ、これが進藤君でその横に居るのが塔矢君です。で、これが和谷君で関西の社君、伊角さんに冴木さん。この人は韓国の高永夏で、この人は黄泰雄で隣は中国の楊浩宇さんです。  ほのかは唖然と写真を眺めていた。何これ、何でこんなにいい男ばっかりいるの? イゴの棋士ってみんないい男ばっかりなんだ。勝手に脳内変換し星がキラキラ・チカチカ瞬いている。 「いいもの見せてくれてありがとう。私ちょっと急用を思い出したからここで失礼するわ。お代は払っておくから大丈夫よ。ゆっくりしていってね」  じゃ、と言って颯爽と出て行ってしまった。 「何あれ……。あーサイン貰うの忘れたわよ」 「あっホントだ。どうする追っかける? それとも晴海貰ってくれる?」 「イ・ヤ。要らないわよ、あんな囲碁のいの字も知らない女なんか。業界じゃ、頭の中は金と男のことしか詰まってないって評判よ」 「あんたって……、相変わらず辛辣ねぇ」 「でも流石、業界で働いてるだけの事はあって事情通だわ」  ○●  事情通の晴海と呼ばれた彼女は「ヘアメイク担当」として働いている。  勿論南条ほのかのメイクも担当したことある。一言で言うならものすっごいイヤな女。  その南条ほのかとの出来事があってから1ヶ月ほど経った頃、またメイクの仕事が回ってきた。 「ヘアメイク担当の山岸です。宜しくお願いします」  いつもの様に挨拶し準備に取り掛かる晴海。 「遅いわよ。早くしなさいよ」  ほのかの情のカケラも持ち合わせない発言に、瞬間ムカッときたが其処はそれ。営業スマイルで「申し訳ありません」殊勝な素振りで頭を下げておき、心の中で舌を出している。別に時間に遅れちゃいないわよ、バーカ。  もう一人女優の夏樹マナがいた。 「山岸さん宜しくね」にこやかに挨拶をしてくれる。 「はい、お願いします」こちらには丁寧に頭を下げておく。  彼女は大変頭のいい女性で、性格も悪くない。物事をきちんと把握し冷静に観るタイプ。余計な事は喋らないが、言うべき事はしっかり言う女性だ。いずれ彼女は人気が出るだろうと、業界では見られている。 「ああもう~、最近ちっともいい事無いわ。お目当ての男は見向きもしやしないし。ああ腹立つ!」  今日もご機嫌斜めの様子のほのかだ。この女の機嫌がいい時は、いい男を捕まえた時か金が入った時限定だ。 「そんないい事ばっかりある訳無いでしょ。ほのか、まだ藤原さん狙ってるの?」 「そうよ、悪い」 「悪いと言うより無理なんじゃないの。どうみたって、藤原さんがほのかを相手にするなんて思えないけどね」 「何でよ。私の何処が不満な訳。こんなにいい女なのに」 「自分で其れを言うか。あのね天下の藤原コンツェルンの御曹司なのよ。その気になれば、なるかどうかはわからないけど、女なんて選り取り見取りの立場なの。でも彼ぐらいになると、女遊びするにしてもすぐに噂がたつから、慎重にならざるを得ないでしょうね。何しろ玉の輿に乗りたいと思う女ばっかりだからねぇ、誰かさんみたいに」 「アンタってイヤな女ね」 「ほのか程じゃないわよ」  などという会話を、晴海はポーカーフェイスでしっかりと聴いていた。流石にマナさんきちんと見てるわ。  そのほのかはマナに訊いた「あのさ、囲碁棋士の進藤ヒカルって知ってる?」  それを訊いた晴海は内心ドキッとした。思わず平静を装ったが一瞬表情に出たかも知れない。その晴海をマナが鏡越しに観ていた。チラッと目が合うとマナさんニヤッとした。 「進藤ヒカル、知ってるわ。今期の天元戦挑戦者になったわね。彼キュートよねぇ。そこら辺のアイドルより素敵だわ。昨年は王座戦落としたから、今回は頑張って欲しいわ」 「マナ、囲碁知ってるの?」 「囲碁ぐらい誰だって知ってるわ。なに? ほのかは知らないの?」 「全然知らなかった。ネットで見たらオセロかと思って、友達にそう言ったら笑われた」 「プッ! あっそう。で、進藤ヒカルがどうしたの?」  マナさん、また私を見た。 「藤原さんのマンションに行った時に、ちょうど会ったのよ。彼、部屋のキィーを持っていたから、アンタは誰でどうして部屋のキィーを持ってるのか訊いてみた」 「ハア? マンションに行った、じゃなくて、アンタが勝手に押しかけたんでしょ。で、部屋のキィー持っていた……か。と言うことは、信頼の置ける相手で、もの凄ーく親しい間柄ってことか」  晴海は得心が言った。あー成る程、それであのカフェでの会話になるのか。 「そうでしょ? あの二人デキてるのかと思っちゃった」 「はい? デキてるって同性愛の事言ってるの?」 「そう」 「へぇー。それはまあ判らないけど、だとしたら、ほのかに勝ち目は全く無いわね。諦めなさい」  ほのかは憮然とした。よくまあこれだけ不機嫌な表情が作れるなと、思うぐらいに。  そのほのかがとんでもない事を言い出し、晴海を唖然とさせた。 「あの二人を仲違いさせる様に仕向ければいいんだわ」  いい事を思いついたと言わんばかりの発言。まさに自分の考えに酔いしれてる様だ。 「ちなみにどうやって?」 「えーとそうねぇ。うーんどうしようかなぁ~」  思いついたけれど、この先をどうするのかは頭の中には無いようだ。マナも晴海も脱力しそうだった。 「そうだ! 私と藤原さんがキスしてるところの写真を、進藤ヒカルに見せるとか」 「藤原さんと付き合っても無いのに?」 「だからぁ、合成写真作るのよ」 「……そんな幼稚な手で、誰が騙されると思ってるの」  子供じゃないんだから、そのぐらいの事で仲違いなんかする訳無いっつの。やっぱり頭カラッポだわと、マナも晴海もお互いの顔を視て、同じ事を考えたようだと思った。 「ダメか。じゃあさ、進藤ヒカルにストーカー被害受けてて、付きまとわれて困ってるってマスコミに流せば」 「ほのか、それほんとにしたら犯罪だから。大体されてないことを立証出来ないでしょ」  チッと舌打ちが聴こえる。  ほのかはこの時点で大きな思い違いをしていた。進藤ヒカルというあの若者を、佐為から引き離しさえすれば、自分が取って代われると思い込んでいる事。  そしてもう一つの思い違い。  藤原佐為はヒカルに害を為す者に対しては、徹底して容赦が無いということを、知らなかった。  佐為はこういった面を、ヒカルには絶対見せなかったし、悟らせなかったので、ヒカルは終生その実態を知らぬままだった。ヒカルにとっての佐為は、凄く優しく嫋やかで美しく、高潔で知性に溢れ、この世で神の一手を極められる、最も囲碁の強い人という認識しか持ち得なかった。 「ほのか、いい加減にしたら。何をどうしたって藤原さんがあんたに興味持つ事なんて、絶対あり得ないから。諦めなさい、無理無理」 「はい、南条さん終わりました」  晴海がそう告げると同時に、扉の外から南条さんお時間です、お願いします。とスタッフの声が掛かった。 「はーい、今行くわ。じゃマナお先」  そう言い置いて軽やかに出て行った。 「夏樹さん、お待たせしました」 「はい、お願いね」  暫くメイクに没頭し、ヘアにかかろうと言う時マナさんが話しかけてきた。 「山岸さん、確か先月囲碁祭り行くって話してたわよね」 「あっはい、覚えてらしたのですか」 「さっきのほのかの話、何か知ってる事でもあるの?」 「そう見えましたか?」  マナさんニヤリとした。 「見えたわよぉ。何か知ってるなら教えて。ほのかってホントに考え無しだから、何かとんでも無いことしなけりゃいいけど」 「そうですね。後先考え無いようですね。藤原さんに惚れてるとは思いませんでした」 「素敵な男性ね。単に綺麗なだけの女性じゃ相手にならないのに、ほのかは全然解ってない」 「実はその囲碁祭りが終わった明くる日に、友達と一緒にカフェに居たんです。で、その時に信号待ちで止まってるリムジンに、進藤君と藤原さんが乗ってるのを見たんです。私達、進藤君凄い車乗ってるねぇとかいいながら話してたら、突然ほのかさんが話しかけて来たんです。シンドウヒカルを知ってるの? って」 「へぇ、そんな事が」 「そうなんです。だから囲碁界の事とか、進藤君のこととか色々教えてあげました。で色々情報収集したら、突然用を思い出したから帰るわ、じゃーねとか言って出て行っちゃいました。ほのかさんとはそれっきりなんですけどね」  フ~ン。一体何を考えてるのやら……。  ほのかは目先のことしか考えない。おまけに自分にメリットになることにしか興味が無い。  それも形のあるメリット。  人なんて多かれ少なかれ誰しもそうかも知れない。だから其れを責めるつもりも無いし、やめさせるつもりも無い。だがメリットというのは、形があるものだけ、目に見える利益があることだけではない。  人の世の営みの中には目にみえなくても、メリットを受けている出来事は数多に存在している。 『ほのかに其れを言っても理解しないだろうなぁ』  マナはそう思っているので、敢えて言うことはない。  出来ればほのかが大人しくして、何も仕出かさないのを願うばかりである。  ○●  この数ヶ月後、ほのかと男友達数名は、進藤ヒカル拉致未遂容疑で捕まった。  佐為が事前に、山岸晴海から情報を提供されていた為、ボディーガードをつけていた事と、ヒカルの家に遊びに行く予定だった塔矢・和谷・社が、ヒカルが車に連れ込まれる現場に遭遇、社の運転する車が正面からぶつかった。  相手の車も発進し始めたところだったので、お互いさほどスピードが出ていなかった為、エンジン部分がイカレタ程度で済んだ。が、塔矢と和谷は生きた心地がしなかったらしい。  ボディーガードが窓を叩き割り運転手を拘束、逃げ出した男は「くらぁー! 待たんかーい!」と追い駆けられた社にラリアットされて伸びた。  この件でほのかは警察のお世話になり、芸能界も追われ以降行方しれずとなった。言うまでも無く藤原コンツェルンの圧力がかかっているので、二度と芸能界には戻れない。  警察で聴取された時に、進藤ヒカルを拉致してどうするつもりだったのだと聞いたら、男友達に襲わせようと思ったのだと言ったらしい。  襲うとは暴力を振るって傷めつけたかったのかと訊いたら、そうじゃなくて犯そうと思ったのだと。そうすれば気まずくなって、二人を引き離せると思った。と言うような事を言ったらしい。  後日それを聴いたヒカルは、何とも言えない表情を浮かべたらしい。  連絡を受けた佐為はすぐに駆けつけ、ヒカルが無事であることを確かめ安堵の溜息を洩らした。  佐為に丁寧にお礼を述べられた三人は「いいえ、当たり前の事しただけです。進藤が無事で良かった」  こちらも心底安堵していた。佐為からは社に車をプレゼントすると申し出があった。 「そんな、そんなええです。俺が勝手に車ぶっつけただけやし、気ぃにせんといてください」  社はそう言って断ったのだが、佐為はそれでも譲らず 「いいえ、社君の機転のお陰でヒカルが無事だったのです。どんな車がいいですか? 好きな車を言ってください」 「えっ、そやかて。そないな事までしてもらう訳には……」  なあ? そう言って皆に同意を求めた。  ヒカルは俺が買うからと言ったが、佐為に駄目です、私が買いますと突っぱねられた。  社も散々断ったが佐為も譲らず、結局塔矢と和谷にご好意をお受けしたらと勧められ、買って貰うことにした。 「どんな車がいいですか?」 「あのー、ホンマにどないな車でもエエでっか?」  そう言った社が選んだ車は、ハマー(HUMMER)H2だった。  塔矢と和谷が揃って仰天していた。確かに藤原さんは何でもいいとは言った。言ったが、まさかアメ車!?  それにH2でも1000万円ぐらいの値段がする。確かに社にはピッタリ似合いそうではあるが。 「アハハー、ヤッパこないに高い車アカンですやろ? だからええですわ」 「全然構いませんよ。それでは日を決めて選びに行きましょう」 「ホンマに?! ホンマにエエんでっか、ホンマにぃ?!」  ああ~、俺どないしょー。ハマーだ、ハマーが来るぅ~。社のテンションMaxの喜び様を、みんなが嬉しそうに眺めていた。  後日、社の元に車が届いた。もう嬉しくて嬉しくて舐める様に撫で回していたらしい。  それから暫くの間、東京組みの都合などお構いなしに社は大阪から車を乗り付けていた。 「オーイ、ドライブ行くでぇ~」

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