想恋歌
番外編 その1 2014.3.30
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ 余りの人数の多さに台詞割が上手くいかなくて、ボツにした部分の話です。《第十一話》 の後の話ですね。 只今体調不良を起こして、PCに向かう時間が余り取れないので、番外編としてこれを載せます。 一部台本形式でお送りしま~す。 ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ 今日は個室のある居酒屋だった。銘々てんでバラバラに注文をいれる。店の人が困るから纏めろよと、誰かが言っているが、みんな無視だ。 アルコールを飲めるのは門脇・伊角・芦原・冴木・奈瀬・本田。 半分大人の和谷・小宮。オコチャマの塔矢・社・越智達。 「俺らもアルコール飲んでええやろか」 社がそう言うと「オコチャマはダメです。俺らが責任取らされるから、ソフトドリンクにしなさーい」 門脇にクギをさされチェッ! とブーたれる。 越智 「あの藤原って人、何で棋院に来てたんだ? 楊九段と黄九段が来るのは解るけど」 誰に問いかける訳でも無く、口を開く。 和谷 「そういえばそうだよな。北斗杯の打ち合わせじゃないか?」 越智 「そんな打ち合わせは担当者レベルでするよ。わざわざオーナーが来るほどのことじゃない」 和谷 「それもそっか。分かんねぇーな。 塔矢は何か知ってるか?」 塔矢 「いいえ、僕にも分かりません。ただ、楊九段と黄九段の後援会は、藤原コンツェルンですよ」 奈瀬 「へぇ、そうなんだ。塔矢よく知ってるわね」 塔矢 「いえ、それ程でも」 奈瀬 「さっきの藤原さんて、何で進藤のことであんなに必死になってたの?」 ねぇ気がついた? って感じで皆の顔を見回している。 和谷 「さぁ? 何でだろうな分からん」 和谷は空っ惚ける。 奈瀬 「塔矢、さっきあの人に体は大丈夫ですかって聞いてたけど、あの人どうかしたの?」 塔矢 「ああ。昨年の10月頃に交通事故に遭って、2ヶ月ぐらい意識不明だったんだよ」 奈瀬 「2ヶ月も?」 塔矢 「うん、そう」 本田 「塔矢どうしてあの人を知ってるんだ?」 塔矢 「僕達は昨年の北斗杯の時に、藤原さんに会ってるんです。ウィステリアホテルは藤原コンツェルンだから」 奈瀬 「あっ、そっか! じゃ、進藤も社も知ってるのね」 社 「おお、俺らも知ってるでぇ」 奈瀬 「進藤って暫く前からずーっと元気ないけど、どうしたの? 棋戦もいいところまで行くのに、最後は潰れるし」 和谷 「あのなぁ奈瀬、人の心配するより自分の心配しろよ。お前今年もプロ試験受けるんだろ?」 和谷が奈瀬にクギをさす。ココらへんで、奈瀬の興味本位の質問を押さえとかないと、延々と留まる事が無いのだ。伊達に付き合いは長くない。 奈瀬 「わ、解ってるわよ。自分の事は自分でちゃんとするわよ」 和谷 「最近調子いいって言ってたから、今年こそは合格決めろよ」 冴木 「和谷、そんなプレッシャーかけてどうする」 優しく宥める冴木。 奈瀬 「ウゥゥ。冴木さん優しい……」 門脇 「前から聞きたいと思ってたんだけど、塔矢君って子供の頃にイジメにあってなかったか?」 冴木 「ハッ? 門脇さん何で突然そんな事聞くんですか?」 素っ頓狂な声があがる。 門脇 「いやだってさ、小さい頃からその髪型だろ。それにお前ちょっと世間からズレてっからさ。そうだったんじゃないかなぁーと、思ってさ」 塔矢 「はい、イジメありましたよ。でも今思えばですけどね。当時はイジメられてるって感覚がなかったです」 本田 「例えばどんな?」 塔矢 「靴や上靴隠されたりとか、体操着隠されたりとかですかね」 伊角 「お前それで何も感じなかったのか?」 塔矢 「はい、全然感じ無かったです」 奈瀬 「塔矢って変わってると思ったけど、やっぱり変わってたのねぇ」感心した様子で言う。 伊角 「それで、ずっとイジメられてたのか?」 塔矢 「いいえ、すぐ止みました。家で研究会があった時にその話をしたら、緒方さんが迎えに来るようになったんです。それからは無くなりました」 芦原 「そういえばそんな話出たことあったなぁー」 全員がそりゃそうだろうと納得していた。ヤーさんも真っ青なあの白スーツで来られた日にゃ、誰も手出ししないだろうさ……。一体、どんな顔をして塔矢を迎えに行ってたのだろうか? 凄く聞いてみたい! のだが、怖くて誰も本人には聞けない。 芦原 「社君はもう高校は卒業したんだよな。ご両親は、棋士でやっていくのは許してくれたんか?」 社 「もう、卒業したよってこっちの粘り勝ちってことですわ。ホンマは大学まで行かされそうになったんやけど、喧嘩して家おん出てしまいましたがな」 伊角 「ウォ! やるなぁー。じゃ、今は一人暮らしなのか?」 社 「はい、そうでっせ。どうせなら、可愛い女の子とかと一緒に暮らしたいんですけど」 門脇 「ナマ言ってんじゃねぇ。俺だって居ないのによ」 社 「へっ! 門脇さん女性と付きおうてるんや無いんですか? この前惚気てはったやないですか」 奈瀬 「フフフッ門脇さんね、ふ・ら・れ・た・の。ね!」 門脇 「奈瀬ちゃーん、お口が軽いでしゅねぇ。ダメですよぉー、人様の秘密をペラペラしゃべっては。ちょっとお仕置きしちゃいますよぉ」エロエロ顔で奈瀬に引っ付いていく。 奈瀬 「やだぁー門脇さん酔払ってるわよぉー。シッシッ! 近寄らないで。和谷、何とかしなさい!」 和谷 「何で俺が」ブツクサ言いながらも、門脇さんを引っぺがす。 伊角 「ところで進藤の引越しの件は、どうなった? ご両親には許可貰ったのか?」 塔矢 「はい、何とかOK貰ったって言ってました。最初は大分心配されたらしいです」 伊角 「そりゃそうだろう。進藤だもんな。何時引越しするんだ?」 塔矢 「6月に丁度2日間空いてる日があるから、其処でするそうです。えっと、2日と3日ですね」 和谷 「じゃ、手の空いてる人は手伝いに行こうぜ。進藤に食事出させよっと」和谷がちゃっかり決める。 奈瀬 「塔矢は引越しどうしたの?」 塔矢 「僕はもう済みました。手伝いにも来て頂きましたから、早く終わりました」 小宮 「じゃ今度からは、和谷の家と進藤の家に打ちに行けるな」 塔矢 「よかったら僕の家も使ってくれていいですよ」 和谷 「やめとけ塔矢。入り浸ってどうにもならなくなるぞ」 小宮 「なんだよ和谷。俺らがいつも入り浸ってる様に聞こえるじゃないか」 和谷 「そうやんか」 小宮 「このやろう、差し入れ持って行ってやんねぇぞ」言いながら和谷にヘッドロック。 和谷 「アゥ……ギブ・ギブ!」 こちらはスーパーに買い物に来たヒカルの母。熱がある息子の為にプリンやら桃缶やら品定め。アイスクリームはレジに行く前に選ぶとして、北斗杯に行く時にも持たせた方がいいかしら? などと考え事していたら 「おばさん、こんばんわ」と声がかかった。振り向くとあかりちゃんが立っていた。 「あらあかりちゃん、こんばんわ。こんな時間にお買い物なの?」 「ええ、甘いモノが食べたくなって。おばさんはどうしたのですか?」 「ヒカルが熱があってね、それであの子が食べたい物を買いに来たのよ」 「エッ! ヒカルが? 熱高いんですか?」 「そうなのよ。38.5度もあって、体の節々が痛いらしいのよ。困っちゃうわ」 「そうなんですか。確か明日から北斗杯の大会じゃなかったですか?」 「そうなのよ。熱が下がらなかったらどうするのかしら? 付いて行く訳にも行かないし」 「そうですね。じゃおばさん私が会場に行って様子見てみます。ヒカルにバレないようにすればいいと思うし」 「でもあかりちゃん悪いわ」 「大丈夫です。私明日はちょうど暇してるんです」 「そう? じゃ悪いけど頼んでいいかしら? 何かあったら電話して頂戴ね」 「はい、お任せください」 「じゃお買い物済んだら一緒に帰りましょう。家まで送って行ってあげるわ」 「いえ、大丈夫ですおばさん。ヒカルが心配だから早く帰ってあげてください」 「今はぐっすり寝てるから大丈夫よ。それに若い女の子を一人にして何かあったら、あかりちゃんの御両親に申し訳がたたないわ」 「すみません」 そしてふたりであかりの家に向かいながら世間話に花を咲かせる。 「あかりちゃんは大学卒業したら、進路はどうするの? もう決めてるの?」 「ええ、高校に上がったぐらいから、客室乗務員になりたくて、それで大学も(国際コミュニケーション学科)を選んだんです」 「客室乗務員ってスチュワーデスってこと?」 「はい、そうです。でも最近ちょっと自信無くなってきて」 「大丈夫よあかりちゃん。夢に向かってる時って、そういう気持になることはよくあることなのよ。本当に自分はこれでいいのだろうか? とか、自分には無理なんじゃないか? とか、誰しもぶち当たる壁なのよ。だから、自信持って進みなさいな。あかりちゃんなら絶対ステキなスッチーになれるわ」 「あ、ありがとうございます。なんか勇気湧いてきました。でもおばさん、スッチーは死語ですよ」 「あら! そうなの?」夜道をふたりの笑い声が木霊する。 ヒカルにはあかりちゃんの話黙っておこう。と心に誓う美津子ママであった。その方が面白いし……