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想恋歌

第一章 ふたたびを貴方と 序章                             2013.10.28

 ああ~、泣いている。呼んでいる、あの子が……  どうか、私を戻して、あの子の側に。  神よ、私の願いを叶えて。  この想いを汲み取って。神よ……            ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇  遙かなる昔、平安の都に類まれなる碁の才能を秘めし、一人の貴人がおりました。  ()の人の名は「藤原佐為(ふじわらのさい)」  見目麗しきその貴人は、当時の大君の囲碁指南役として宮中に参内する身分であり、その美貌と才能で、宮中の女性(にょしょう)達の”憧れの君” でした。  しかし、快く思わぬ輩の(はかりごと)に嵌り、入水する事になる。  成仏出来ぬ魂は、天界に逝くことなく現世を彷徨いある碁盤に眠り続ける。  それから約820年後の江戸の世、備後国因島(現・広島県尾道市因島外浦町) に住まう桑原虎次郎に、憑依する。幼名、桑原虎次郎、後の本因坊秀策は6歳にして、近隣には立ち会える者が居ない程の棋力を有していた。   天保8年(1837年)8歳にて出府し本因坊丈和に入門、1848年(嘉永元年) に、正式に第十四世本因坊跡目となった。  だが1862年(文久2年) 江戸でコレラが大流行し、秀策も34歳の若さでこの世を去る。 「佐為、すまない……」の言葉を残して。  佐為は悲嘆にくれるが、自分にはどうする事も出来ず、そのまま碁盤に眠り続ける。  そして約140年後の冬に、当時小学6年生だった「進藤ヒカル」に邂逅する。  憑依した少年「進藤ヒカル」が住まう世界は、平安の世とも江戸の世とも全く違う世界。  これが平安の世から1000年経った同じ日本とは、到底信じられない時代であった。見るもの聞くものがすべて初めての事ばかり。    進藤ヒカルはやんちゃで無鉄砲、思ったことをすぐに口に出してしまうトラブルメーカー。  目上の者を尊敬する事もしらない、まさに『ガキ』そのものであった。  ヒカルは囲碁を全く知らず、佐為は途方にくれる。が、ある中学校の囲碁大会で、一目見ただけの石の並びを瞬時に覚えてしまったヒカルを見て、佐為は自分がヒカルの許に憑依した訳を悟る。    まだ、子供子供したあどけない表情をクルクル浮かべるヒカルが、自分の教えこんだ知識を吸収していく様をみて、とても嬉しく楽しかった。  ヒカルはまさに天才と呼ぶに相応しい才能を秘めていた。  その才能を開花させたのが、自分だという事が誇らしい思いだった。  ヒカルと過ごす日々が楽しくて楽しくて、佐為は幸せだった。この幸せがずっと続くものだと思っていた。  だがヒカルが強くなっていくとともに、佐為の碁を打つ機会が減り、二人の関係に微妙な影を落としていった。  ついに、ヒカルとの別れが近づいているのを、佐為は悟った。  ネット碁で対峙した「塔矢行洋」との一局。結果は佐為の勝ちだったが、誰も気づかなかった逆転の一手をヒカルが見つけた時、神はこの一局を見せる為に、自分をヒカルの元に降臨させた事を理解する。  ヒカルを【神の一手】に導く事が、自分に与えられた使命だったのだと。   『ならば、もう自分に残された時間は無い』魂が磨耗していくのを感じる。  もっともっと、碁が打ちたかった。  自分は消えなければならないのに、何故ヒカルだけ……  ヒカルだけが【神の一手】を追い求める事が出来る。  その嫉妬に苛まれる自分に愕然とする。    ヒカルと一緒に居たい。  別れたくない、別れたくない……のに。  まだ、あどけなさを残した可愛いヒカル。貴方の未来を共に歩みたかった。  薫風香る5月5日、ヒカル14歳に佐為は消滅していく。 『ヒカル、楽しかった』の言葉を残し。  類まれなる碁の才能を秘め、神の如き強さの碁打ち『藤原佐為』と、  神から『天賦の才』を与えられ、神に愛されし少年「進藤ヒカル」との物語である。

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